税理士試験時代以来の蕁麻疹
ひとり税理士、経営者の端くれとして生活していながら、自身のブログで暴露するのもおかしな話なのですが…
僕は忍耐力には自信がありますが、いかんせんメンタルが弱い、「豆腐メンタル」です。認めます。
ちょうど今の時期、税理士試験まであと1ヶ月。そういう時期になると緊張やプレッシャーで蕁麻疹ができました。
1年間の努力と苦痛、我慢の価値が本試験のたった2時間で判定されてしまいます。
どんなに頑張っても不合格なら意味がありません。A判定だろうがD判定だろうが意味がありません。
金メダルを目標としていた選手が「金メダル以外は無いのと同じ」というやつです。
そういう事を言うと、他の選手に無礼だと言う人がいますが、金メダルしか見ないで血のにじむ努力をしてきたわけです。オリンピアンは税理士試験と違って一度逃したら次は4年後。選手生命が続いてない恐れもあります。それはそれはプレッシャーは税理士受験生の比ではないでしょう。
…話が逸れました。
税理士受験生も毎年1科目30万円くらいのお金を払い、働きながら、遊んだり飲んだりするのを我慢し、ジングルベルや除夜の鐘の音に耳を塞ぎ、日程によってはお盆休みに悲壮な顔して電卓を叩いています。
勝てば官軍の世界なので、いくら模試でトップに君臨しようと本番でA判定で落ちたらただの敗者、賊軍です。
職場やお客さん、家族や恋人に合否を聞かれて「落ちました」と言った時の相手のリアクションたるや…。
因みに僕はそれで当時(20近く年前)婚約していた女性に逃げられたことも…(笑)
とにかく、とんでもない重圧の中で闘っている受験生がほとんどです(やってる人にしか分かってもらえませんが…)。
なので、僕の場合は試験が近付くと蕁麻疹が出ます。冬くらいまで消えません。
それが今、受験を終えたにも関わらず、ここ3日間で一気に出ました。
故人の遺志、遺族の思い、従業員の希望を背負いきれなかった僕。
ここ数日のブログネタになっていた、後継者不在の税理士事務所を引継ぐ件。
ひとり税理士として本格始動してたった1ヶ月という事もあり、見事に豆腐メンタルスキルが発動してしまいました。
もちろん、決断したからには拡大路線で。共に盛り上げ、事務所承継請負人的なビジョンを描いて交渉に臨みました。
ところが、いざ故人先生の直近の決算書を見ると…という事です。
- 体力的な問題から更に顧客をカットしていた。
- 目を疑うほどの安い報酬でやっていた。
- 残り3週間で7件の法人申告(内2件は来週が申告期限)。
- 遺族は顧客も相続財産と考えている。
- 文句を言わずただ引き継いで欲しい。
これまで数件あった引継ぎの打診をまとめるとこんな感じです。
恐らく、後継者不在の事務所の総意でしょう。
気持ちは分かりますし、知り合いと共に盛り上げていくというロマンもあるでしょう。
しかしロマンだけでは食べていけません。
税理士法上大丈夫か、互いにWIN-WINであるか、後々怨恨を残さないか…とにかくクリアしなければいけない事がたくさんあります。
もし僕がもともと人を雇ってある程度の規模だったら丸ごと受け入れられたでしょう。
ところが、ひとり税理士で「自分ひとり食べていければ良い」というスタンスで駆け出した矢先の事でしたので、どう考えても赤字でした…。せめて顧客から売上規模相応の報酬を取っていたらうまくやれそうだったのですが。
税理士は税の専門家。経営者としての手腕の有無は別。
税理士は経営コンサルタントの一種と見られがちですが、必ずしもそうではありません。
勉強ばかりしてきて、資格を取って独立したものの、コミュニケーションの取り方が得意でなく営業が出来ないという税理士は多いです。
さらに、税理士という立場の印象から、客商売・接客業ということが分かっていない税理士、職員は特に多いです。
経営するということは、サービスを提供してお客さんからお金をもらうということ。従業員を雇うならその従業員の生活も背負うということです。
トップが倒れたらお客さんにも従業員にも影響を及ぼします。
そのためにリスクヘッジは欠かせません。
かくいう僕も、もし自分に万一の事があったら、この税理士にお願いしようと考えてあります。また、その税理士が快く受けてくれるよう、先に述べたような価格破壊で薄利多売はしていません(そもそも薄利多売する方針ではないので)。
独立するという事は、自分勝手にやって良いという事ではありません。すべて自分が責任を負うという事です。
今回の打診は、その責任を負える器ではありませんでした…。
新たなしくじり案件として代表者反省文に追加しなければなりません。