引継ぎは難しい

後継者のいない税理士事務所を承継する話をしておりましたが、結論として一旦リセットという事になりました。

僕にその事務所の全てを引き継げるほどの器量が無かったのが原因なのですが、雇用を確保しさらに共同経営者として迎え入れるご遺族の方の給与を捻出したら僕が食べていけなくなるということが発覚しました。

打診を受けた後、プレッシャーで眠れない日が続く中で方向性ややるべき事を考えていたのですが、故人先生の決算書を見て瓦解しました…。

顧問料が安過ぎるのはこの世代の通説なのか

僕が所属していた事務所は顧問料が非常に安く、決算料も取りませんでした。それが職員の給料を圧迫し、ただただ不満に繋がっていました。

今回引き継ぐ算段でいた事務所も同様で、これまで見たことのないほどの安さでした。

例えば年商4億超、法人税も1,000万円超という法人で年間の報酬は50万円ほど。

記帳代行か無くてもいささか安過ぎるのではないかと…。これでは70件持ってても2,000万円しかないのも当然です。見てみると3,000〜3,500万はあって然るべきでした。

これでは追加で雇えませんし、既存の人数で出来る量ではありません。トップが変わって他の知ってる税理士に流れる会社もあるでしょう。コロナ禍の中での価格交渉も苦戦することは想像に難くありません。

ひとり税理士の信念を曲げてまで挑戦してみようと思いましたが蓋を開けてみたらとても手に負えそうにありませんでした。

知人に稼業を継ぐべく東京の某有名証券会社を辞めて実家に帰ってきたら実は借金が10億あって自己破産したという人がいるので…その人は今でこそ挽回し爆進していますが、僕には正直荷が重く…。

後継者難の税理士事務所が多い理由

後継者問題に直面している税理士事務所は僕が知る限り顧問料が安過ぎる場合が多いです。

適性な顧問料を取らないと仕事量の割には儲からず、従業員の負担の割に相応の給料が払われずモチベーションや業界の人気が低下します。

税理士や会計事務所職員のなり手不足を招きます。

僕自身、もし会計事務所に勤めようと思うんだけどと相談を受けたら、やめた方が良いとまず言うでしょう。

一方で後継者がいる事務所は拡大路線をひた走ります。

税理士事務所は税理士が、一般企業は社長がいなくなったら従業員が露頭に迷います。お客さんにも迷惑がかかってしまいます。後継者問題から目を逸らしているのは先のリスクヘッジを怠り、その場しのぎの経営をしている証拠です。

そういった体制は経営内容にも影響を及ぼしているなと。

きれい事だけでは経営は続かないし食べてもいけない

やりがい、チャンス、世の為人の為、義理…それだけでは腹は膨れません。

従業員の生活はもちろん、お客さんの事そして何より自分の生活の事を考えなければなりません。

生きていくために「お金」は絶対必要です。

居合わせた国税上がりのベテラン税理士に「勢いが重要」「ジャンプしてみろ」と畳み掛けられました。

しかし、内容を知らない人のいう事を聞いてジャンプする人はいません。ただ奈落の底に転落するだけです。

なるほど、チャンスだ、ありがたい。そう捉えるよう心掛けていますが、無謀と分かっていてジャンプはしません。まだ死にたくないので。

やらない後悔よりやる後悔。そういう言葉もありますが、100対1の勝負で1に賭けるひとはまずいません。

浅からぬ仲なので何とかしてあげたいという思いに嘘偽りはありませんが、やりたい事とできる事は違うなと。

己の力不足を痛感すると共に、苦い経験として学びました。