働きながら税理士を目指せるか?
先日、税理士に興味があるという20代の若者と会う機会がありました。
仕事柄、残業も多いようで、そんな状況下で合格できるものなのかと。
多くの受験生が働きながらやってる
学費の工面も心配なく、働かないで受験に専念できるのが一番理想です。
しかしながら、そんなのは親が会計事務所をやってるとか、家が裕福だとか、貯蓄が十分にあるとかでないと…なかなかハードルは高いでしょう。
中には「3年で税理士になる!」とタイムリミットを設けて受験に専念し、見事に合格した人もいますが、かなりレアですから相応の根性をお持ちの方でないと参考になりません。
相談に来られた方は、家庭もあるからすぐには仕事を辞められない。残業もある。と、ごくごく一般的な立場です。
そのような立場であっても、もちろん税理士受験は可能です(ちなみに2023年からは簿記論と財務諸表論については受験資格が不要になるので誰でも受験できます)。というか、ほとんどそういう人たちなので。
僕の受験時代は会計事務所で働いて、仕事が終わったら大原に直行し、土曜日は簿記論の勉強会にも出席して午後は大原。そこにラスト2年間は大学院にも通うという「社会人受験生大学院生」でした。
周りの受験生も、平日でも夜8時から閉館の9時までのたった1時間であっても大原に来て勉強している人もいましたし、土日も夕方になると奥さんと小さな子供が大原にパパを迎えに来る光景をよく見たものです。
所帯を持つ人の受験生活は家族の支えが必要になりますが、そうやってみんな挑戦しています。支えてもらう、理解してもらうためには全力・本気を見せなければなりませんが。
勉強量も工夫次第
税理士受験の勉強を始めるにあたり、
- 毎日勉強しなきゃダメか?
- 一日何時間やれば良いのか?
- 通学じゃなきゃダメなのか?
などなど聞かれました。
もちろん毎日勉強した方が良いですが、社会人だったり家庭を持ったりするとそうもいかないもの。
なので土日しか勉強しない、早朝の数時間しかやらない、など自分なりに決めている人がいました。土日だけの勉強法の人も合格していましたが、曰く、「税理士なるという強い気持ち(根性)があればできるし、土日しか時間が無いという背水の陣な感じががむしゃらになれて良い」と。
この方は土日は会館〜閉館まで勉強していました。
それ以外の方も「ダラダラと2時間勉強するより集中して1時間やったほうがずっと良い」と、トントン拍子で合格していきました。
これについては天性の「要領の良さ」「地頭の良さ」に左右されるところもあるかもしれませんが、ただやみくもに時間さえ費やせば合格するというわけではないということです(僕はやみくもに勉強しまくって落ちまくったクチです…)。
残業で帰りが遅くなり、夕飯を食べて風呂に入ったらもう寝る時間だとしても、個別問題を1問だけでも解く。
そういう意志の強さが合格を手繰り寄せるわけです。
時代遅れだけど根性論の世界
税理士試験に「ラクして受かる」はありません。
半年で受かった、3カ月しか勉強してないのに受かった、という猛者がたまに出てきますが、ヤマが当たって合格したかのような運の要素もあるので、そういう人の体験談を鵜呑みにして「なんだ、半年で受かるなら楽勝じゃん」などと楽観視しないようにしましょう。高確率で痛い目に遭うかと。
他にも、しばしば「大学院で試験免除を受ければラクに取れる」という人がいますが、書いた論文が100%試験免除されるわけではありません。
そもそも論文を書く前に大学院の入試に合格しなければならないし、単位を取るために税理士とは関係の無い勉強もしなければなりません。しかも期末試験をパスしないと単位を取れなかったり、毎週レジュメやレポート作成を課される講義もあります。
その中で期限までに論文を完成させて、ゼミの教授のOKと口頭試問で居並ぶ教授人のOKを得なければ卒業させてもらえません。
そうして卒業した後に、その修士論文が国税庁の審査にパスできたらやっとこさ免除を勝ち取れるわけです。
論文を完成できず自主退学したり休学したり、はたまた教授に「卒業はさせてあげるけど、これでは審査は通らない」と烙印を押された人も見てきました。
試験も論文も、根性論100%の世界です。
試験を受ける人はこの6〜7月が一番キツい時期です。
やれどもやれども点数が上がらなかったり、仕事でなかなか勉強時間を取れなかったり、行き詰まってリフレッシュしたつもりが一日怠けてしまったと自己嫌悪に陥ったり、普段は気にならないことにも腹が立ったり…とにかくキツい時期です。
耐えきれず挫折して消えていく人もいっぱいいますが、それを耐えてこそ根性が培われますし、大金払って苦労を買っている人間は必ず人様の役に立てるようになります(悪人の役に立って捕まった税理士や税務署職員もいますが…)。
おわりに
ここのところ立て続けに受験生やこれから目指そうという方からの相談がありました。
どちらの方もそのまま今の仕事をしていれば安泰だったのに、それを手放して挑もうとする志を持っていました。
僕のように「金持ちになれると聞いた」という不純な動機ではありません。
彼らが税理士になったら秒で追い越されそうな一抹の不安を感じつつも、頑張る人のことは心の底から応援しています。