どこまでが経費?
個人事業主、フリーランスの方から時々聞かれます。
株式会社、有限会社などといった「法人」ならば「やってる事はぜんぶ営利目的のため」的なものがあるので(何でもOKという訳ではありません)あまり悩まないのですが、個人となると仕事とプライベートとの線引きが曖昧です。
そりゃダメでしょ!と思ったもの
これまでそりゃダメでしょと思った領収書は次のようなものです。
①高級ブランド品
「贈答品だから交際費です!」との事でしたが、調べてみると…飲み屋のお姉さんへの贈答品でした。もちろん取引関係はなく、お客さんであるご自身からの熱烈なプレゼントというもの。問答無用で外しました。
ほかにも、「ある程度良いモノを持っていないと取引先にナメられるから」と営業回り用のバッグに高級ブランド品の領収書を消耗品として入れている方がいましたが、こういったものもダメです。
②衣服代
見るからに作業服でプライベートでは一般的には着ないようなもの…ではなく、プライベートでも着られるもの。コレはダメです。
ただ、「休日中に突然仕事の依頼が入って出先から直行し、汚してしまった(その後仕事用に)」「(美容師やアパレル業など)マネキン的な要素もあり流行は押さえなければならない」といった相談があり、正直悩みました。
理由はどうあれ、社名の刺繍があるとかでもなくプライベートで使えるものなのでアウトです。ただ、高価なもの、ぜいたくなものでなく仕事として相応のもの。それならば…税務調査で指摘されるリスクを納得してもらった上で決算整理仕訳でいくばくかの家事按分。全額はムリでも半分くらいは経費にしてあげたいなぁという思いで処理する場合もあります。
ただし、その人の見なりと衣服費のバランスに疑問を感じたら全額ダメにします。
③飲食代
コレは一番悩ましいかも知れません。
現場仕事や外回りの仕事、取引先に訪問した際などで何かと飲食の機会があります。
一見、「出張中の食事なんだから旅費でしょ!」
と思うかも知れませんが、それを許したら「税金で持ってかれるくらいなら…」と毎回外食して、プライベートの外食でさえ「この時仕事だったんだよ」と考える輩が出てくるかもしれません。
考え方としては、人間生きていくためには食事が欠かせないので、そこに「仕事中だから」という要素は関係無い。というところでしょうか。
ただ、次のような場合なら経費性があります。
A.取引先と飲食を共にした
これは営業活動であり、今後も取引を続けて欲しい、懇意にして欲しい、そういった思いからおもてなしして一緒に飲み食いすることもあるでしょう。そういった場合は「交際費」になります。
その際、領収書に誰と一緒だったかを買いておくとより良いでしょう。
B.スタッフとミーティングで
経営者たるもの、時に意見交換や今後の方針について部下と飲食をしながら話し合うこともあるでしょう。そういった場合は「会議費」になります。自分は一切飲食せずにスタッフにだけご馳走してあげたという場合は「福利厚生費」になります。
C.一人でカフェでパソコン開いて仕事をしていた
ここが悩ましい…というか細かいところです。
先ほども述べたように自分一人の場合は「食べる」=「生きていくための行動」であり仕事とは直接関係ありません。
いやいや、空腹では仕事にならないよ!という気持ちは分かりますがダメです。
ただ、コーヒー飲んだくらいでしたら、その場所を使わせてもらったという意味合いで経費にできます。「コーヒー&ケーキセットを頼んで仕事してるんだから全て場所代だ!」という声が聞こえてきそうですが…。
そもそも飲食代は「原則的に」ダメなのです。そこになんやかんや理由をつけて一部良しとしているわけです。なのでコーヒー&ケーキセットで仕事をしていたときはコーヒーの代金を。セット価格でしたら半分を。といったことろでしょうか。
D.取引先(飲食業)の店で一人で食事をした
これについてもC同様かなぁとも思うのですが、取引関係があるのであれば交際費で良いかなと。取引先にお金を落としてあげることでご縁を繋げるということも当然にあるでしょう。
個人事業主に福利厚生費は無い!
従業員は良いのに何で自分はダメなんだ!
と言われた事があります。しかし、福利厚生費とはそもそも従業員のための費用なのです。
なので個人事業主が仕事中にケガをして病院に行ったとしても福利厚生費にはなりません(医療費控除になる)。
仕事中に腰をやってしまってマッサージに行ったという方に「これは労災だ!」と力説されましたがダメです。
仕事で疲れてるんだから一息つきたいよ。と思う気持ちも分かりますが、それを許してしまったらどこまでも経費にしてしまうもの。
それは税を免れる行為であって許されませんし節税でもありません。税務署がそれを見つけたら罰金の税金がかかってしまいます。
おわりに
ときどき、おひとりで申告までやられている方の中に「税務署は何も言ってこなかったよ?」と言ってなんでもかんでも経費にしている人を見かけます。
それは言うなれば「警察が見てなければスピード違反も捕まらない」ようなもので、小規模だから税務調査は来ないということはありません。
実際に前職では個人事業主の方の所にもふつうに税務調査が来ていました。
たまたま来なかっただけで、税務署はちゃんとデータを持っています。
税務調査は過去の分までバッチリ見られますし、悪質だと判断されたら罰金の税金がどんどん上乗せされていきます。
飲食代や福利厚生費的なもの、誰もが考えそうな事はもちろん税務署も分かっています。正々堂々とやって調査官に手柄を立てさせない。悔しがらせて帰ってもらう。そんな感じでいかがでしょうか。