個人事業主の「給料」

年末調整の仕事の依頼が増えてきました。

そんな中でのご新規様で「おや?」という事がありましたので書き留めておこうと思います。

大好きな原哲夫先生の「公権力横領捜査官中坊林太郎」の名セリフ。専従者給与は親、関係あります…。

身内の給料に注意!

ひとつ屋根の下に暮らすご家族。父を個人事業主として家族で自営業をされています。

息子さんが父の下で働いていました。

当然、働いた分の給料を払っており会計上も「専従者給与」として計上されていました。

ところが、念のため聞いてみると「青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書」の提出がありませんでした。

「え?青色申告ならOKじゃないの⁉︎」と驚かれましたが、身内への給料の支払いはこの届出をしなければ経費になりません。

しかも「じゃあ今から出せばOK!」というわけにもいきません。提出期限があります。

『青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した人や新たに専従者がいることとなった人は、その開業の日や専従者がいることとなった日から2月以内)』

これが提出の期限です。

そもそも、こうした「生計を一にする(ひとつの財布で生活している)」家族に対する給与は経費にならないのが原則です。

届出をすることで特別扱いしてくれるというわけです。

青色申告者でない場合(白色申告)

白色申告の場合、青色とは違った取扱いとなります。

届出書は無いし、払った金額=給料でもありません。

「事業専従者控除」という名目で、下記のとおりです(以下国税庁HPより引用)。

(1)事業専従者控除額は、次のイまたはロの金額のいずれか低い金額です。

イ 事業専従者が事業主の配偶者であれば86万円、配偶者でなければ専従者一人につき50万円

ロ この控除をする前の事業所得等の金額を専従者の数に1を足した数で割った金額

(2)白色事業専従者控除を受けるための要件は、次のとおりです。

イ 白色申告者の営む事業に事業専従者がいること。

(注)事業専従者とは、次の要件のすべてに該当する人をいいます。

1 白色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること。

2 その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。

3 その年を通じて6か月を超える期間、その白色申告者の営む事業に専ら従事していること。

ロ 確定申告書にこの控除を受ける旨やその金額など必要な事項を記載すること。

おわりに

個人事業主は「個人」であるが故に事業とプライベートの線引きが曖昧になりがちです。

例えば携帯電話代。スマホ本体の代金や通信代は仕事のやりとりで必要不可欠ですが、友人と話したりスマホゲームで遊んだり、私的に検索したり…プライベートでも多用するものです。

それを全額事業の経費としたら「租税回避行為」です。

身内への給料も「税金で国に持ってかれるくらいなら…」と必要以上に給与として払ってしまえという租税回避行為の余地もあるわけです。

そういったことを防止するためでもあります。

お身内への給与や賞与の支払いをする時は必ず届出をしてあるか確認しましょう。