見えないモノを売る仕事
所得税の確定申告が大詰めを迎えています。
当事務所もお陰様で昨年よりも件数が増え、また、法人決算や相続、個人成り等のスポット案件がいくつか重なって、今年はずいぶん慌ただしくしています。
そんな中で、毎年必ず来てしまう事象があります。
「青色申告」が誤解されがち
「事業所得で青色申告」
これ自体は普通のことなのですが、頭を抱えたくなるのが顧問契約をしていない単発での依頼。
どうも世の中で「青色申告にすれば税金が安くなる」と、自身に好都合な部分だけを切り取って解釈されている人が多いように感じます。
貸借対照表も無い、決算書と申告書と数字が違う。なのに65万円控除している。そんなケースもありました(税務署が何も言わないのもおかしい)。
青色申告の特典を受けるには相応の条件があります。
サラリーマンの副業の場合はその副業が「継続性があり相応の人力や設備を投資している」という条件があります。そうでなければ事業所得ではなく雑所得なので青色申告はできません。
仮に事業所得に該当したとしても、青色申告の特典を受けたいのであれば帳簿の備え付けが必要です(平成26年より白色申告であっても帳簿の備え付けが義務付けられました)。
その特典を享受するために僕ら税理士に依頼が来るわけです。が…
税理士はボランティアではない
これまでも何度か言っている事ですが、この時期になるとどうしても「招かれざる客」も若干名出てきます。
領収証丸投げでやって欲しい、何もやってないからとにかくやって欲しい。
依頼としては一般的なものです。
が、招かれざる客はそれを1カ月1万円の計12万でも高い。3万円くらいでやってくれるんじゃないの?と言ってきます。それも3月に入って(去年は「領収証丸投げで2万円でやってくれるんですよね?」と勝手に金額を決めてくる人間もいた)。
税理士が署名を付けて提出するということは、その人の申告について責任を負うということです。
雑な仕事をしたら賠償責任を負ったり資格を剥奪されたりもします。
だから青色申告を受けるためには全ての仕訳に目を通しますし(もちろん白色も精査する)、私的な支払いが経費に含まれていないか、税法から逸脱していないか、過度な納税になっていないか、苦労して培った知識をフル動員して、ご本人が自分では難しい申告作業のお手伝いをするわけです。
そうして然るべきお代を頂戴して初めて食べていけるのです。
それを2〜3万でやれというのは無礼だと考えます。そういう人を当事務所ではお客様とは思いません。
例えば、カフェで一杯650円のコーヒーを見て「隣のコンビニだと一杯100円なんですけど。高くないですか?」って言いますか?
だったらコンビニのコーヒーを買えば良いじゃんとカフェの店主は思うでしょう。
確定申告も税理士に頼んだら高いと思うなら独学してクラウド会計でやるなり無料相談会に行くなりすれば良いのです。
そうして頂ければお互いにムダ金、ムダな時間を費やす事もありません。
僕は、税理士とは納税者の伴走者だと考えています(二人三脚…とまでは言えない)。申告屋さんではありません。
招かれざる客を招いてしまうのは、まだまだバリアーが弱かったということなので自分の落ち度です。お互いにミスマッチによって不愉快な思いをしないためにも立ち回り方を見直そうと反省させられた次第です。