被災された方に税の救済措置はあるの?

令和4年9月23日から24日にかけて、静岡は台風15号による災害に見舞われました。50年ほど前の「七夕豪雨」という大水害をも超える観測史上一位を更新した凄まじい雨は「滝のような」「バケツをひっくり返したような」では済まない異常な雨音をたてて降り続き、わずか半日で9月1ヶ月分の1.5倍という雨量でした。

災害ごみの後ろの川が氾濫し、いつもお世話になってるカフェも再開の目処がたたない被害を受けてしまいました。

当事務所はハザードマップで安全を確認した上、3階という高さの場所を選んでいたので無事でしたが、周囲の水路は溢れ山から流れてきたであろう土砂や枝葉が散乱しています。

そんな中、お隣の清水区では川が溢れ各地で浸水被害があり、3日経った今なお断水が続いています。

一個人の救済措置「雑損控除」

災害や盗難、横領によって家具・家財といった生活に欠かせない資産が損失を被ったときには雑損控除という所得控除が受けられる場合があります。

ちなみに災害とは自然災害や火災、害虫・害獣被害などで、人災(詐欺・強迫など)はダメです。

「生活に欠かせない資産」というのもある程度定められていて、ご自身が「欠かせない!」と思っていても法律上「贅沢品」とされたら対象外となってしまいます。正直、シビアな救済措置と言えるかもしれません(結局、税金なので)。

例えば、通勤や買い物に使っている車なら対象になりますが、休日しか乗らないとか趣味性の高い車は対象外となってしまいます(冒頭のカフェのマスターさんは車好きで普段使いの軽自動車の他にもピカピカに手入れしていた昭和時代の旧車やバイクが水没してダメになってしまいましたが…雑損控除の対象にできるのは軽自動車だけでしょう…)。つまり、趣味や娯楽、保養や鑑賞といった道楽目的のもの(一個・一組・一揃えの価額が30万円超のもの)は生活に通常必要でない資産とされてしまい、対象外です。チープカシオの腕時計なら良いけどロレックスはダメといった感じです。

また、買った金額を控除してくれるわけではなく、被害を受けた時の直前の時価を元に計算します(これがまためんどくさいのですが…)。

こうして導き出した損失額と「災害関連支出」という、字面のとおり災害によって損壊した住宅や家財などの取り壊し費用、土砂の撤去費用、原状回復費などの金額を用いて控除額を計算します。

ちなみに控除額は、次の①、②のいずれか多い方です。

①損失の金額-総所得金額等×1/10

②損失の金額のうち災害関連支出の金額-5万円

事業者が災害で受けた損失はどうなるの?

一個人は良いとして、「じゃあ自営業や会社が被った被害はどうなるんだ?」ということですが、商品(棚卸資産)や事業用資産、不動産収入をもたらす資産などについては雑損控除の対象にはなりません。

なにも救済しませんよというわけではなくて、雑損控除ではなく、経理上で廃棄損や除却損、災害損失として損失計上をしたり、原状回復費を修繕費として費用計上(一部資産計上することも)するので、結果としてその分税金が安くなります。

おわりに

雑損控除は「よく分からん!」と思われるでしょう(他にも雑損控除に代えて災害減免法という選択肢もありますが今回は省略させていただきます)。

具体的な損失額をいちいち計算しなければなりませんし、保険金が出た場合には相殺するので、保険金がおりてもまだ赤字!という時でないと雑損控除の出番がありません。

それでも適用対象になれば確定申告でいくばくか税金を取り返せるor節税できる可能性がありますので、今後、日常生活を取り戻すためにお金を使った場合(災害関連支出)は領収書をとっておいてください(感覚的には医療費控除のように)。加えて、どんな被害を受けたのかが分かるように写真をたくさん撮っておいてください(罹災証明書や保険金の請求時に必要です)。

確定申告期の無料相談会に赴いて手続きできるかも知れませんし、縁あってこのブログを見た今回の被災者の静岡県民の方につきましては「ブログ見たよ」と言って頂ければ無償で相談・申告を承ります(確定申告期は繁忙期のため許容量に達したら締め切らせて頂きますが)。

※令和4年11月22日現在、すでに手一杯のお問合せ・ご予約があり、一旦締め切りとさせて頂きます。

毎年どこかで起こる水害をいつもニュースで対岸の火事のように見ていましたが、今回「明日は我が身」と痛感しました。

テレビに映るのだけが被災地・被災者ではなく、他にも数多くの被害が出ています。清水区だけでなく他の地区でも浸水被害がありますし、停電や土砂崩れの被害もありました。

そんな中で今回もデマを飛ばしたあるあるの馬鹿野郎もいます。そんな奴は増水した巴川に流されてしまえと思ったのはここだけの話です。