免税事業者のインボイスをどうしたもんか
近頃、お客様のところに訪問すると「取引先からインボイスの登録した?って聞かれたんだけど…」という声をちらほら聞くようになりました。
聞いたことがあるかもしれませんが、インボイス制度(適格請求書等保存方式)というやつです。
取引先からしてみれば、売って預かった消費税から仕入や経費と共に支払った消費税を相殺した残りを納税しているわけなので(原則課税の場合)、払ったはずの消費税が認められないと国に納める消費税が増えてしまい税負担が増してしまうわけです。
税負担の他にも、A社はインボイス対応してけどB社はインボイス対応してない…となると、同じ「仕入」でも取引先ごとにいちいち消費税を意識しなければいけなくなるので、経理の手間も増えてしまいます。
と、なると…「じゃあB社との取引やめようか」なんてことにもなりかねません(国はダメだと言っていても現実は…)。
お客さんが業者か一個人か
今回のインボイス制度、僕の勝手な解釈では「免税事業者からも消費税を搾取する天下の悪法」です。
取引先とのパワーバランスによっては泣く泣く消費税を納める道を選ばざるを得ない人もいるでしょう。
ただ、それはあくまで自分のお客さんが事業者なのか否かで変わってきます。
たとえば美容院やアパレル店など、客層の大半が一個人であれば、お客さんが消費税の申告をしているわけではないので関係ありません(「経費で落としたいので領収書ください」と言ってくる人もたまにいますが)。
だったら、免税事業者のままでも良いでしょう。
問題なのは自分のお客さんも商売人(消費税を納めている人)だった場合です。
そもそも免税事業に消費税の概念はない
分かりやすい例でいうと、田舎の小さな駄菓子屋さん(明らかに年間1千万円も売ってなさそうな)であっても100円のお菓子を買おうとすると108円払います(持ち帰りの軽減税率8%)。
え?こんな小さな駄菓子屋なのに消費税取るの??と思うかも知れませんが、この駄菓子屋さんも仕入の際に消費税を払っているわけです。だから自分も売るときに消費税を取る、と。ただ、消費税の免税事業者だから申告もしないし納付もしない。
こういうケースはあると思います。
お店としては税込み108円で売っているわけですが、そもそも免税事業者は消費税を納める義務が免除されているので、その売上108円には消費税は含まれていないということになります。
法律上、免税事業者なんだから消費税を取っちゃイカン!ということはないので、この8円は消費税として国の税収になるのではなくて駄菓子屋さんの売上になるわけです。
国はこの8円に目を付けたということです。
取引先との意思疎通をする
自分は免税事業者だけど、取引相手が消費税を納めている事業者の場合、インボイス登録をしなければ、これまでは税込価格で請求していたのが税抜の本体価格のみで請求することになります。
免税事業者であるこちらが「消費税込み」と請求書に書いても、インボイス制度が始まったら、取引先がこちらに払う代金に消費税は無かったものとされてしまいます。
取引相手が寛大な人で消費税分を泣いてくれるのであればそのまま変わらず…でも良いのでしょうが、現実はそうも行かないでしょう。
インボイスの登録をしてインボイスナンバーを取得して、それを請求書や領収書などに記載しなければ消費税分を請求してはいけない。インボイスの登録をしたら消費税の申告&納税もしなきゃいけない。ざっくりそんな感覚で理解していただければ良いかなと。
おわりに
すでに毎年消費税を納めている場合は何のためらいも無くインボイス登録をすれば良いのですが、取引先がインボイス登録しているか否か。これがとても重要になります。
令和5年の10月から始まってしまうので、そろそろ制度をなんとなく理解して、自分の取引先はどうなのか、自身が免税事業者ならこの先どうするか(免税のままでい続けるのは難しくなってくるかなと感じています)、決断が遅くなればなるほど間際になって登録申請が殺到してインボイスナンバーの取得が遅くなる…ということになるので今からどうするか考えることをオススメします。