値付けをどうするか
商売をしていると、自らが提供しているサービスや品物の値段がはたして適正なのか、ふと考えるときがあります。
先日も独立開業されたばかりの仲間が来られて、料金表をどうするかという話になりました。
ネットに溢れる「安い」に便乗しない
今では何を買うにもまずネットで最安値を知ることができます。
よく聞く話で、服や靴を買う時はまず店で実物を見て、試着してサイズ感を確認し、それからネットで最安値を探して買うというのがあります。
税理士の場合、ビスカスとかミツモアとか顧客紹介をする会社がありますが、それらもネット上では「安い税理士」という言葉を使っています。
業務拡大していきたいと考えている税理士のニーズをうまく利用している賢いやり方だと思いますが、安易にそれを利用していいものやら…。
開業したてで客がいない、それでは食べていけない…そういう理由でとにかくお客さんを!と紹介してもらいたいと思うのも分かりますが、紹介する側がハナから「安い」と言っている。つまり「安さ」目当てで来る見込客が来るというのはいかがなものかと。
それでいてずいぶんな紹介料を要求されますし。
とはいえ、先輩方から勧められたのもあって、どんなものかと登録だけはしてみました。
思ったのは、こういうサービスが業界の価格破壊を推進しているのだなということ。
直感で「こんな安い仕事はやりたくない」と。なので応募はしていません。
100%自分の手取りになったところで自身の料金表の金額に変える。というのはまず無理でしょう。当初の安さで先方さんも納得しているわけなので。
「付加価値をつければ良い」というのは外野のヤジと同じで、何にしても誰でも「値上げ」は嫌います。爆安のものを適正価格に戻すだけでも嫌がられます。
スタッフを雇っていて薄利多売でやっていける事務所なら可能でしょうが、ひとり税理士にはそぐわないなという感想です。
ひとりで薄利多売なんてしていたらずっと働いていなければなりませんし、ブラック事務所からやっと独立した意味がありません。
経験としてひとつ紹介会社から受けてみようかなと考えていますが、条件面はできるかぎりこだわって軸をブレさせないようにします。それでも契約取れるのか?というミッションです。
値段は自分が決める
いつも疑問に思うのですが、世間の物価上昇に反して税理士の顧問料は下落傾向にあります。
会計ソフトも昔より高いし、諸々の備品や消耗品も値上がりしているのにです。
例えば、パン屋さんは小麦の値上がりで販売価格も高くなりますが、その後の需要と供給が落ち着いて小麦の相場が下がっても値段はそのままだったりします(廃棄ロス、値下販売も踏まえた値段設定なのでしょう)。
税理士の場合、10年以上値段は変わらない、とりあえず使えるから弥生会計04を2021年でも使い続けている。という驚いた話もありますが、無駄な手間ばかり増えて「安かろう悪かろう」です。
ほとんどの税理士が固定金額の顧問料でしょうが、やはり折を見て改定していった方が良いのではないかなと思います。僕の場合は決算を機にその翌年の顧問料を改定するよう、売上の規模で料金を分けています。あとは記帳代行があるか、締め切り間際のお急ぎ便か否か、などの手間のかかり具合を加味して。
つまり、きちんとしてくれていたら安いし、だらしなくしていたら高い。という感じです。
あとは…人と人なので、人間性も加味したり。
要は、他人に決められた値段ではなくて自分で決めた値段の方が俄然ヤル気が出るということです。
おわりに
独立したときに一番悩んだのは値付けでした。
パワーバランスで値下げを余儀なくされたこともありましたし、口を開けば値下げ値下げという所や前職でずっと安過ぎる金額でやっていた所は契約解除したものです(その後しばらく、ちゃんと月末の支払いができるか不安で眠れなかった)。
独立したてで顧客も少ない。そんな中でもブレてはいけないと思い、目先のお金よりも心に決めた軸を優先させました。
お金の心配や食べていけるかどうかの心配は人それぞれ生活のグレードがあるので心配したらキリがありません。
とにかく、税理士に限らず商売人である以上、自分を不当に安くしたくないものです。へたに安くして「あーあ…」とため息つきながら仕事をするより、「これなら良いか」と思えて仕事をする方がクオリティも高くなるでしょう。
税理士としても経営者としてもまだ2年目の青二才ですが、安請け合いは身を滅ぼす愚行だと愚考します。