タダで教えろということ
有益な情報はタダでは手に入らない
税理士に限らず、どんなことでも言えますが、とかく人は何か分からないことがあるとまず近くの人に聞いて済ませようとします。あとはググってみたり。
僕もそうです。楽なので。
しかし、すべてをそれにしてしまっては浅いし危険かなと思います。
頭を使って考えることが億劫になってしまうと、言われたことを鵜呑みにして流されるだけの人間になってしまいます。情報弱者とか情弱って類いのやつです。そういった類いの固定観念は恐怖ですらあります。
今、とあるひとり税理士が入院をしており、そこの業務を請け負っているのですが、「ひとり」を選んだ時点でそのリスクは想定されていたはず…なのですが、そこは何ら対策がされていませんでした。
僕が一時的に手伝うことになる前に数件の関与先が流出しており、もし僕が受けなかったらさらなる流出があったでしょう。
もしかしたら食べていけなくなったかも知れません。
同じひとり税理士。明日は我が身ということもあり、面識の無い税理士でしたが他人事とは思えず受けたわけですが、蓋を開けたら驚きの連続でした。
還暦過ぎてるという世代的なものもあるかと思いますが、とにかくやり方が古い事務所でした。
- 領収証やタイムカードを毎月受け取りに行き、仕訳を入力したり給与明細や納付書を作って届ける(昭和か!)。
- 関与先に合わせて夜間に伺う(そりゃ体壊します)。
- プライベートと仕事がごちゃまぜのメールアドレス(DMだらけでイラッとする)。
- 2021年に弥生会計04を使い続けてる(商売道具が17年前の会計ソフトというのは異常です)。
- 事務所が紙で溢れてる(その割に大切な書類は抜けててPDF保存すらしていない)。
などなど、それでいて「友達価格」という有り様。最速で5ヶ月の入院ですが、リハビリ後も車椅子生活になるかもしれないと医者に言われているそうです。
バタバタしていて関与先にも何ら連絡もせず、僕が片っ端から連絡するような状況で、日々やんわりと苦言を呈しておりますが、「じゃあ色々教えてください」と。
その辺りの姿勢がまず違うかなと。
しかも顧問料は自分の懐に入れようとしています。「だって収入が無くなるし…」と。ふつうに考えれば業務をしているのは僕なので、当たり前ですが僕が報酬を貰うことになります。
手間ばかりかかるのに爆安友達価格で当事務所の料金表の半値以下。入院はこの税理士の都合ですからお客様から取るわけには行かないので、割に合わない分をこの税理士に請求しているのですが、どうやら「雇ってる」「金を払ってるんだから」と勘違いされている模様。
理由はなんであれ、働かざる者食うべからず。です。
そうなってしまったのはリスクマネジメントを怠った結果です。
僕に独立とひとり税理士の道を教えてくれた冒頭の本の著者である井ノ上先生は自転車に乗っている時に後ろから追突されるという事故で3ヶ月も入院していたのに、病室にパソコンやWi-Fiを持ち込んで仕事していたそうです。近々、骨を固定しているボルトを撤去するためにまた数日入院するとのこと。
今の世の中は便利なもので、会えなくてもzoomなどで顔を見て話せますし、FAXや電話を使わなくてもDropboxやメール添付などで書類のやりとりもできます。
僕が手伝ってる税理士はそういったことを何らしていませんでした。
リハビリする元気はあるのに仕事をする元気は無い。というのは…社員がいればそれでも業務を進めてくれますが、ひとり税理士には無責任すぎます。
そういうツールに疎い世代なのかも知れませんが、少なくとも僕は持ち前のネガティブスキルでに常に最悪の事態を想定しているので、じゃあそうならないためにはどうするか?と考えたり調べたりしています。そうして「ひとり税理士」で有名な井ノ上先生に辿り着きました。
実際に東京まで会いに行ってお金を払って井ノ上先生のセミナーに参加して直に話を聞かせてもらったり聞いてもらったりしました。
そうやって対策を練る行動を起こすことが自分のためであり、ひいてはお客様のためであり、それが「責任」だと思ったので。
「なんとかしないとなー」と思ってるだけじゃ何も変わりません。行動しないと。
そうやって情報を得て、見よう見まねでやってみて、まだまだ井ノ上先生の足元にも及ばないけれどなんとかひとりでやっていけてるわけです。おなじ境遇で税理士をやっている先輩や仲間にも恵まれています。
それを「じゃあ教えてよ」というのはどうなの?と。
先日、お客様に「そういう情報は商品だよ。キミもお金を取って教えるべきだ」と言われました。
所詮二番煎じなので今のところお金を取るつもりはありませんが、何も考えないくせに楽して解決しようとする姿勢は不愉快です。
それでいて働きもせず顧問料は自分の懐に入れようとする態度も。
やはり「税理士」だとか「先生」とか言われると図が高くなるのでしょうか。ウチは「先生って呼んだら値上げするよ」と言ってるのでほとんどの方が苗字や名前で呼んでくれていますが。
ウチの看板を背負っているのは自分ひとりなので、ひとりでしっかり掲げなければなりません。仕事の質だけでなく日頃の受け答えなどといった人間的な部分もきちんとしなければと。
お客様を大切にするにはまず自分を大切にする。そうしないといざという時に迷惑をかけてしまいます。
人の振り見て我が振り直せで改めて自分にもしもの時があったら…という対策を見直して新たに手を打ち始めています。
収入のメインの柱が倒れた時のために備えた新たな柱の構築、どこでも仕事ができる環境の整備、横の繋がりの構築…独立したらそういうこともしていかなければなりません。
事業をされている方が「雇われてる方が楽だよ」と言うのが独立してよく分かるようになりました。
たとえ楽でも雇われ人には戻りたくないですが。そもそも楽=リスクなので。
おわりに
そもそも、何かを知ろうと思ったときに過程をすっとばして答えを求める…ネットでググってはい終わり。時短ではありますが、「検索」と「調べる」は別物だと思っています。
時々やけに世の中を知ったような態度の方に出くわしますが、聞いてみると「Wikipediaに書いてあった」「YouTubeで見た」という方が非常に多いです。
専門家の発信ならさておき、収入を狙っての配信は再生数を稼ぐためにオーバーな表現や不安を煽った表現をするものです。
料理を全くしない人はエビフライの衣をつける過程すら知らないもの。
それが世の中の仕組み、お金の生み出し方、ITツール…そういった複雑なものはなおさらでしょう。
本当に身に付けたいのなら試行錯誤や創意工夫が必要で、いきなり答えを求めるのではなくて、「僕はこう思ってるんだけど、どうでしょうか?」という姿勢で教えを乞うことが大事ではないかなと思っています。
それが「学ぶ」ということかと。
税理士として独立するということは単に仕事ができれば良いのではなくて、自分にお金を払ってもらえるなりの価値を見せなければなりません。物販ではなくサービス業なので。
もちろん万人に受け入れてもらえることはあり得ませんが、僕を選んでくれている人には常に満足感を与えられるように。
そう思って日々「どうしよう…」と思案しています。