税理士試験時代の心の支え
ストレス社会で働きながらの税理士試験は人生という限られた時間においてはかなりの足かせです。
それゆえに得られるモノと比べれば妥当な代償ですが。
とはいえ合格を勝ち取るまでの重圧やストレスはとんでもないもの。心の支えは必要です。
それがパートナーであったり、お酒であったり、趣味であったり、人それぞれあることと思います。
僕の受験時代の心の支えはとあるサックス奏者の優しさでした。
平原まことさんというサックス奏者です。歌手の平原綾香さんの父親です。
彼は「マルチサックス」と言われ、どのサックスを演奏してもピカイチ。多い時は年間1,000件ものバックミュージシャンとして演奏していました。
とても柔らかな、お人柄が表れているような音色は聞けばすぐ解ります。それほど他のサックス奏者と違います。
その平原まことさんが先週、お亡くなりになりました。
ご存知のとおり、僕は税理士試験に人並外れた年月をかけました。一発合格の経験は無く、一番早くて財表と所得税に3年かかりました。
そんなうだつの上がらない受験生時代に何度も挫折しかけましたが、そんな時にこのメッセージ入りのCDが届きました。
当時、まことさんのオフィシャルサイトからCDを買うときにサインを入れるか否かの選択欄とご本人へのメッセージを書く蘭があって、そこに厚かましくも「まことさんが思う人生に大切なことを書いてください」とお願いしたら、写真のようなメッセージを入れてくれました。
その後、所得税が合格できた年に銀座でまことさんのライブがあって、そこで合格できたこと、このメッセージに救われたことを休憩時間に意を決してお伝えしたら、「メッセージの子だよね。もちろん覚えてるよ!おめでとう!よく頑張ったね!嬉しいからハグしちゃう!」と満面の笑顔で喜んでくれて、この記念写真を撮ってくれました。
その後のコンサートでも覚えてて下さり、いつもライブ後にはチャリティー募金箱を持って観客と触れ合う時間があって、まことさんだからと多めに募金すると涙を浮かべながら「ありがとう!必ず届けるからね!」と。
そんなまことさんがくれた言葉だったので支えになり、次は税理士バッジを付けた姿を見てもらいに行く。
そう思っていた矢先に訃報が届きました。
コロナ禍でライブ活動ができないご時世で、さらに胃癌の闘病生活をしていましたが、復帰すること能わず旅立たれました。
世界的なサックス奏者でありながら、お人柄も世界一で、心の父でした。
いつかは東京で腕試しをしたいと言ったら「僕がお願いしてる税理士、すごく良いから紹介してあげるよ!」と、およそ音楽とは違う場でも何かと良くして頂いたものです。
晴れて税理士になったこと、独立開業したこと…それをお伝えできなかったのが心残りですが、それはいずれあの世でお伝えするにして、暫く事務所のBGMをまことさんの音色で彩りたいと思います。
道は違えど、こうありたいと願うお手本のような人。彼との出会いがなかったらきっと今なお不合格通知を受け取り続けていたでしょう。
まことさんの領域に達することはできずとも、せめて同じ方向を向いて邁進していきたい。
改めて身が締まる思いです。