「繁忙期」をどうしたもんか。
税理士の世界は11月から翌年の5月までが繁忙期です。
法人は3月と9月の決算が多く、それらの申告期限は5月、11月。
その9月決算・11月申告に始まり、12月は年末調整。年明けには法定調書の提出や焼却資産税の申告に始まり、3月半ばまで個人の確定申告。
やっと落ち着いたかな〜と思った頃に3月決算・5月申告が舞い込んできます。
「繁忙期」に呑まれないようにしたい
仕事が趣味なら良いのですが、会計事務所で働く税理士受験生はそうも言っていられません。
繁忙期を理由に勉強が足りず不合格…となってしまったら人生を一年棒に振ることになります。
この業界では「繁忙期を経験してナンボ」「税理士業界のしきたり」などと正当化されていますが、そんなことはありません。
むしろ令和にもなって同じ事を言っているのは恥ずべきことです。
一度きりの自分の人生の選択権を上司に握られてはいけません。
税理士になりたくて会計事務所に勤めているのなら「税理士になる」ことを最優先にしましょう。
権利を主張するために義務もしっかり履行する
雇用主は給料を払っているわけですから、仕事もしないで(仕事をしていても)定時帰宅はできません。
とはいえ講義に出席したり勉強時間を確保するためには夜の7時や8時まで残業していてはいけません(この時間を「残業」と言わないのは異常)。
仕事で疲れ果ててはその後に勉強する気力なんか残っていませんし、そういう事務所はえてして休日出勤があります(そのくせ休日出勤の給料がでないことも)。
そんなことを繰り返していると「仕事だから仕方ない」と勉強を諦めてしまいます。税理士になることが目標だったはずなのに。
こういった会計事務所の「あるある」に陥らないよう、主張することは大事です。
極論、この業界は不人気業界で慢性的な人手不足なので、ブラック事務所に囚われる必要はありません。
ただ、主張するからには「大人な主張」をしなければなりません。
毎日どれだけ残業をしているのか、なぜ残業せざるを得ないのか、など。よくよく見てみると担当件数が偏っていることもしばしば。する必要のない手間も未だ根強く残っています(総勘定元帳のインデックス貼り、資料をわざわざ受け取りに行く、預かった領収書を紙に貼り付けるなど)。
税理士も人間。変化を嫌がる税理士はいっぱいいます。国策としてDX化を推進しているのに遅々としてデジタル化・効率化が進まないところがいっぱいあります。
とはいえ、それを我慢し続けていては限りある人生の時間を搾取され続けます。
僕は「事務所のしきたり」をサラッと無視して自分のやり易いように変えていきました(ボスに楯突くのではなく、うやむやのうちに)。
あと、昼休みや始業前に勉強していました。そういう姿を見せつけるのは大切です。
隙間時間の勉強は必須
勉強の時間を取れないなら隙間時間を大切に使うしかありません。
僕は通勤電車の片道15分を行き帰り毎日理論暗記に充てていました。ここでスマホでゲームや動画にうつつを抜かしていては説得力がありません。駅から自宅までの徒歩20分は電車内で見ていた理論やその日の講義の内容を反芻しながら歩いていました。昼休みも理論暗記だったり個別の計算問題を解いていたものです。同僚と話していたり上司と外食しても得るものはありません。
本当の意味での「頑張ってますアピール」は大事です。
辞める、転職、そんな道も考えておく
「今、自分が辞めたら周りに迷惑がかかる」という考えは社畜の鑑です。
自分自身の人生設計をしっかり考えましょう。
一社員として定年退職までその事務所にいる…そう決断してもその事務所が自身の定年まで存続するか謎です。定年後の食い扶持の心配もあります。
税理士の資格を取れば生きてる間はずっと税理士なので定年はありません。
僕の個人的な意見ですが、税理士にならないのなら会計事務所で働く意味がありません。
そう貫いたからこそ、時間はかかりましたが独立できました。目標を達成するために退職届を出したこともあります。
常日頃から辞める選択肢も持っておくと、いざそうなった時はどうするか思考が働きます。
心の準備ができていれば行動の幅が広がります。
自分が何になりたいのか、どう生きてゆきたいのか、「なるようになるさ」では流れ着いた先が不本意であってもそれを自身が選んだということです。
おわりに
仕事はとにかく期日に間に合わせれば良いので何とかなります(残業する、手が空いてる人がヘルプに入る、ボス自身がやるなど)。ところが税理士試験の勉強は1年間という区切りの中でたった2時間の一発勝負。しかも合格通知を手にできる人はわずか上位1割。勉強は遅れたら取り返しがつきません。
ときどき「来年また頑張るよ」と早々にギブアップする人を見かけますし僕にもそんな時がありましたが、それは税理士を目指す人間にとっては「限りある人生の1年を棒に振る」ということです。
1年、365日、8,760時間、525,600分、31,536,000秒。これだけあればいろんなことができたはずです。
それを税理士試験に注ぎ込むのですから、結果は短期間に出したいものです。
それが出来なかった僕は、30代の10年間は勉強以外の思い出がありません。遊んでいても、呑んでいても、常に勉強のことが頭から離れず謎の罪悪感に苛まれたものです。
僕の場合は仕事量というよりは己のポンコツさ故のものですが…その長い年月で仕事を理由に税理士を諦めた人を何人も見送りました。
難関資格ゆえに時間とお金を無駄にするリスクが大きい、人生を賭けた博打のようなチャレンジです。生殺与奪の権を他人に握らせてはいけません。自分を尊重してくれるのは所詮自分自身のみなのです。