売上のチャンスを自ら手放した話

ひとりでやるならブレてはいけない

ひとり税理士としてやっていると何でもかんでも受け入れるのは難しい時があります。

マンパワーで出来る量は限られているので。

夜遅く、土日もやる。そうすればできなくもないのですが、そんなブラックな環境から抜け出すための独立でもあったので。相応の料金を払ってくれるなら別ですが。

他所の事務所の経験がある依頼者は前の税理士の手数料が相場と思うのは当然なのです。

パートやアルバイトだったり無資格者だからと薄給でコキ使う事務所ならボスは労力を分散しつつ利益を吸い上げられるので薄利多売でやれますが、ひとりではそうもいきません。

その辺はホームページ等で明確に発してるつもりなのですが、未だそういう依頼が来てしまうというのは僕自身の落ち度、隙でした。

ただ、目先の売上のために引き受けるというのは自分の軸がブレるということです。

軸がブレた状態での仕事はストレスですし思わぬミスを誘発しかねません(実際にミスしたことも)。

これまでに断った仕事

独立してたった1年のくせに生意気だと思われるかも知れませんが、より良い人生を送るためにはお金だけではなく心身の健康も大切です。

特に心は。

税理士も接客業なので、人としての心も磨かねばなりません。そういった努力から良い人柄のお客さんやパートナーにも出会えると思っているので。

そういう軸をブレさせない、曲げないためにいくつか断った仕事があります。

①一昨日来た個人の確定申告の依頼(1ヶ月延長されているにも関わらず申告期限まで10日を切っての依頼)→3月いっぱいで締め切ったのを掲載していたが伝わっていなかった

②目先の年間36万円の6月決算法人(決算料、年調、役員の所得税、自社株算定・贈与、調査立会等すべてひっくるめて、しかも会計データが送られてくるのが遅くお盆シーズン前に結果をよこせという無茶振り)→前職時代からの担当時からチクチクとではなくグサグサと教育、告知しておくべきだった

③目先の年間24万円の3月決算法人(経理担当の人が苦手だった、更なる値下げを要求してきた、終始上から目線の理事長だった)→体は削っても心は削らないという軸をブレさせないために(要は嫌いだった)から断った

④目先の年間40万円の9月決算法人(間違いだらけの会計データの上、経理担当の人(苦手な人)が社長に無断で知り合いの税理士とやらに鞍替えした、社長が「陰謀論」信者でつらかった、正月に朝から晩まで社長宅でマンツーマンで飲まされて「親トランプ節」と自身の女性問題を延々と聞かされた、その後度々こういう事が続いた)→売上欲しさに仕事とプライベートを曖昧にした結果

⑤よく分からない講演依頼(よく分からなかったので忙しいと言って断った)

しかるべき報酬を頂けたら受けたかも知れない仕事もありますが、「やらされている感」で受けたくないという大前提があります。

請け負う以上はコロナ禍を生き残れるよう、さらなる高みへと行けるよう、信用・信頼してもらえるよう、心掛けています。

そんな信条を踏み躙られるような気分にされる仕事は受けない。そのためにもっとバリアを強化する、そんな課題が浮かび上がってきました。

ひとりでやるからには

近い将来、独立を考えている知り合いの税理士はほとんどが人を雇うと言っています。

そうすれば雑務は任せられますし、苦手な人がいる関与先はスタッフに担当させてしまえば良いでしょう。

そうして拡大路線でお金を稼げます。

経営者としてはそれが正解なのは解っています。

大きくなってから雇うのではなく、雇うから大きくなっていくのも知っています。

それでもひとり税理士を選びました。税理士業としては零細ですが、それ以外の仕事や収入の構築も進めています。

ひとり税理士の快適さはリスクを遥かに凌駕するので。

「自由」とは本来は「思い通りになる自由」と「思い通りにならない自由」がセットで存在しています(前者のみを自由と取り違えてる人間がほとんどですが)。それでも自由でいたい。そのためには軸がブレないように。

正直、まだ駆け出しなのでやろうと思えば時間はあります。売上欲しさに魔が差しかけたりもしました。

ここでその衝動のままに動いてしまっては後悔する。常に「自由でいたい自分」に問いかけて、売上を手放してでも本音で動くようにしています。

その結果、勤め人時代には考えられなかった自由気ままな税理士業ができています。

独立当初ほど食べていくために請け負ってしまいがちです。それでも一度踏みとどまって自身の料金表や自身の信念、自身の綺麗事と向き合ってから契約するか否か決めたら良いと思います。