独立しても食べていける

独立する前はまさか自分が登録1年目から独立するとは思っていませんでした。

正直、独立が怖かったというのもあります。当時所属していた事務所でズルズルやるか、知り合いの税理士の下で、なんとなくやっていくのかなぁぐらいにしか考えていませんでした。

2世、3世ではないので基盤はありませんし、僕の性格では営業なんかできそうにない。

消極的でした。元々ネガティブな人間なので。

「食べていける」のは意外と簡単。問題はその先。

まだ1年目なので、勤め人の頃より稼ぎは少ないです。借金も抱えました。

15年我慢した前職の環境にとうとう嫌気がさして半ばケンカ別れとも言えるような状態での独立でしたので、準備も最低限。みすぼらしい税理士事務所開業でした。

月末の支払いはできるか、新規のお客さんはいつ来るのか、契約解除されたりしないだろうか、税理士が赤字では示しがつかないのではないか…次から次へと不安が湧いてきてなかなか寝付けない夜もあります。

それでも、三度の飯と住まいは確保できています。「分相応」が身に付いたので独立前のような豪遊・散財もしなくなり、結果、貯金も出来ていますし行く末に備えた投資も少しずつですができています。

本格始動したのは去年の6月だったので2020年は半年だけでしたが、無事に黒字で終えることができました。

贅沢はできませんが、眠れないほどの不安は杞憂でした。

独立して食べていけるために準備していたこと

税理士会で同業者に会うと、羨ましいバックグラウンドを持った若い税理士がいっぱいいます。

親や祖父が始めた会計事務所の跡継ぎとして入れたらすでにお客さんは定着しています。もちろん代替わりして維持しなければならないプレッシャーはあるわけですが、中には「昔からお金の心配なんてしたことがない」と平然と言う人もいます。

羨ましい限りですが僕はそういう星の下に生まれなかったので、自力でどうにかするしかありません。

税理士登録前から「自力で」は何かと意識していました。

独立でなくても、当時の環境からはとにかく1日でも早く脱出したい。知り合いの事務所に拾ってもらうとしたら「手土産」が必要だろう。と。

「手土産」とはもちろんお客さんです。

こういった企てがあったので、お客さんに信頼してもらえるよう奔走していました。

ボスは金払いの良いお客さんの所にしか顔を出さないような人間でしたので、自分の担当以外のお客さんの所にも顔を出して雑談をしてみたり雑用をこなしました。

よく「営業がうまそう」と言われる所以ですが、決してそんなことありません。根は極度の人見知りです。ひとりでカフェに入るのも未だ躊躇していますし、お客さんでさえ電話をする手が重たいです。

それでも下剋上のため、将来の自分のためと言い聞かせて気合いで動いていました。

その甲斐あってか、前職の事務所の契約を解除したお客さんがしばらくした後に僕のお客さんになってくれたりもしました。

とにかく「客商売」ですから、「お客様第一」まではいかなくても、お客さんの事を気に掛ける姿勢が大事です。

サービス業というのは店で商品を買うのとは違って「その人を買う」ということなので。僕自身を売り物にして買って貰う、という心構えです。

問題はこれから

とりあえず衣食住は確保できました。

ここからの問題の方がむしろ難題だと思っています。

安定して食べていくため、一般的な税理士のイメージのようにゴージャスな生活を手に入れるため、やりたくない仕事までしてしまわないか…ということです。

もちろんお金はいくらでも欲しいです。

ですが、お金に目がくらんで割に合わない仕事まで引き受けてしまわないか…と。

税理士の世界も価格破壊が始まりつつあります。パートやアルバイトなど安い賃金でひとを雇って雑務を任せれば薄利多売で所長税理士はたくさん給料が取れますので、ひとり税理士の僕では割に合わない金額の案件でも請け負ってしまうでしょう。すると、その金額がその人の相場になり、口コミで広まってしまう…。

およそ太刀打ちできません。

前職のボスがまさにそのタイプだったので、その料金体系の破壊に悪戦苦闘しています。開業間もないのに3件もこちらから断りました。

今も他所の事務所なら「無料相談行って」と門前払いをするような価格帯のお客さんからも仕事を頂戴しています。

幸い、すでに予約を締め切っていてほぼ個人の申告を終えていたので余裕があったので、前のボスからの紹介ということで受け入れましたが、線引きをしなければなりません。

  • 仕事が多過ぎて休めない
  • 自分に主導権がない
  • 人を雇わざるを得ない

などといったことになりかねないので。

独立してやっと手に入れた自由、やっと手に入れた幸せを仕事に振り回されて失ってしまっては元も子もありません。

経営者として生きて行くという大変さの意味がやっと見えてきたように感じています。